0.愚者-THE FOOL- ①
●0.愚者-THE FOOL-●
大アルカナタロットという22枚のカードについて、個人的な解説を書いていきます。
この大アルカナタロットは全部で22枚あり順番の数字がふってあるのですがこの「愚者」は一番最初の「0」です。
伝統的な形のものではこのカードだけ数字が書かれてない場合もあります。
まだ何も始まってない状態からの「最初の旅立ち」という物語です。
このカードは私のイメージ的には10代後半から20代前半の男の子の感じです。
高校なり大学なりを卒業してこれから社会に飛び立つ、子供というポジションを捨てて大人とか自立とかいう未知の世界に飛び込んでいく。
親とか学校とかの「誰かの管理下」とか「誰かの所有物としての自分」から解放された喜び。
しかしそんな生き方を今までしたことがないので何も分からない。何も分からない事に対する不安を感じる隙も無いほどの喜び。
なんだか分からないけどとりあえず楽しい。
思春期特有のある一面が凝縮されているようです。
これ程までの開放感を感じてしまうという事は今までの拘束がよっぽどキツかったんだと思います。
しかし今までは拘束されてる状態にも、それに対して苦しい思いをしてる事にも自覚が無かったかもしれません。
その拘束の状態が終わる事になって初めて、今まで拘束されてた事を自覚することができます。
過去の「子供という立場だった自分」を知ることができる。
それだけでも一歩大人になったのです。
誰でも大人の始まりは危うく無茶苦茶なものです。
しかし彼は過去の子供というポジションを初めて捨てることができた。最初の一歩を踏み出すことが出来たのです。
大変感動的で尊い瞬間です。
絵を見ると荷物がとても小さい。これからの長い旅をやっていけるわけがないサイズの荷物です。
多分「ちょっとアメリカ行ってくる」と言ってお金もパスポートも航空券も持たずに出てった感じです。
もしかしたら最初から虚言で、2〜3日フラフラして何食わぬ顔で帰ってくるかもしれません。
またもしかしたら、思わぬ出会いや出来事に遭遇した結果なぜかアメリカに行く事が出来るのかもしれません。
荷物の小ささについては他に、昨日まで子供だったので子供服しか持ってない、今の大人の自分のためのものをまだ持ってない、ということもあります。
これから進むにつれて必要な荷物は揃っていくということです。
また意味もなく長い棒に荷物を刺しています。
昔漫画か何かで見て一度やってみたかったんだ、という感じです。それ以上の意味は無いでしょう。
半日くらいしたらこの棒が邪魔になってくると思います。
しかしその「邪魔」という発見も、やってみたから分かる事です。
漫画でよく見るあのスタイルは実際やると合理的ではない、という知識を得て、また一つ大人になるわけです。
たとえ何も準備が整ってなくてもただ「やってみる」という事がどれだけ大切かをこの物語は教えてくれているようです。
私にとってのこのカードは高校卒業と同時に画家になる夢を挫折して初めて人生のどん底を見た後に音楽の方に徐々に目覚めて行く、パンクバンドのライブに行っては暴れるように踊って、血を分けた親友たちとは傷つけあって、まだ恋愛も知らなかった、擦り傷だらけで「キャッホー」と叫んでた時期です。
手放しで崖に向かって進んでいる。
馬鹿に見えるけど彼は崖がある事を知っているようです。
でも崖って落ちてみないと分からない。
大人たちがみんなこれは崖だと言ってるけど彼は疑っているのかもしれません。
それで良いのです。大人の言うことなんか信じちゃダメです。
崖から落ちるのは悪いことだという大人の言うことは信じる必要無いのです。
実際落ちてみたら骨折はするかもしれないけど見たことない不思議な動物に出会えるかもしれません。
(つづく)